ペンギンの話

ペンギンのことをつらつら書いていきます。

海を飛んでいるのは誰か。

ペンギンは「海の中を飛んでいる」と表現されることがあります。いささか詩的に過ぎる表現かもしれませんが、実際、フリッパーを羽ばたかせて水の中を矢のように進んでいく様子は水の抵抗を感じさせないほど軽やかで、「飛翔」と呼ぶに相応しいように思われます。旭山動物園サンシャイン水族館日本平動物園のように、来園者の頭上に水槽を設け、ペンギンがあたかも飛んでいるかのように演出する施設が多くみられるのは、多くの飼育員さんが、「これこそがペンギンだ」と信じていることの証左でしょう。

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ペンギンが空を飛んでいるように見えるサンシャイン水族館の「天空のペンギン」水槽

しかし実際のところ、「海の中を飛ぶように泳ぐ」という表現により近いのは、ペンギンの仲間ではなく、ミズナギドリ目モグリウミツバメ科やチドリ目ウミスズメ科の鳥たちかもしれません。ペンギンと違って飛翔能力を保持しているこれらの鳥たちは、水の中でも、空を飛ぶのと同様のメカニズムで翼を動かして推進力を得ているからです。

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ウミスズメ科の一種ウミガラス葛西臨海水族園

空を飛ぶとき、鳥は広げた翼を力強く打ち下ろして推進力(と浮き上がる力)を生み出しています。打ち下ろした翼を持ち上げるときは、逆に空気の抵抗によるブレーキがかかってしまうため、それを小さくするために翼を畳んで持ち上げます。このときは推進力を得ていません。モグリウミツバメやウミスズメの仲間は、水中でも同様に、「翼の打ち下ろし」によって推進力を得ています。微妙に翼の角度などを変えながら、飛ぶ技術を泳ぎに応用しているのです。

ただ、そのために彼らの泳ぎは、「泳ぎ」としてはやや非効率なものとなっています。「翼の打ち下ろしによる加速」と「(翼を持ち上げるときの)抵抗による減速」を交互に繰り返して進むのは空気中と同じでも、水は空気に比べてずっと抵抗が大きいので、減速の度合い、エネルギーのロスが大きくなってしまうためです。また、飛ぶための翼は櫂として用いるにはいささか大きく、抵抗によって羽ばたくときの体軸のブレも大きくなるため、ペンギンに比べるとややギクシャクした泳ぎに見えます。

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一方、飛ぶことをやめたペンギンは「飛ぶための体の動き」から解放されたことで、「泳ぐために最適な動き」を獲得しました。ペンギンたちウミスズメなどと異なり、打ち下ろすときと持ち上げるときの両方で推進力を得られるように角度を変えてフリッパーを動かすことで、減速によるエネルギーロスのない効率的な泳ぎを実現しています。また、揚力を得る仕事から解放されたフリッパーは櫂として使いやすい大きさ、形態に特化させることができ、体軸のブレもずっと小さく、滑らかに進んでいくことができるようになりました。

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結果として、泳いでいるところを比べてみると、ウミスズメの仲間に比べてペンギンの仲間のほうが、優雅で華麗であるように思われます(主観)。「飛んでいる鳥」にどちらが近いかといえば、やはりペンギンであるように見えるでしょう(主観)。力学的には「飛ぶように泳いでいる」モグリウミツバメやウミスズメよりも、「完全に泳いでいる」ペンギンのほうが「飛んでいる」ように見えるというのはなかなか味わい深い逆説です(日本のペンギン研究の草分けである青柳昌宏先生は、ペンギンについて「泳ぐように飛ぶ」と表現されていました。秀逸だと思います)。

なお、念のため付け足しておくと、ウミスズメやモグリウミツバメの仲間の生物としてのスペックがペンギンに比べて劣っているというわけではありません。大前提として、彼らは空を飛べる。餌をとるために100kmくらいは軽々飛んで移動でき、おまけに泳いで魚を捕まえられるわけで、むしろとんでもないスペックの持ち主です(飛べるのだから、疲れずに長く泳ぐための泳法は必要ない、とも考えられる)。ただ「泳ぎ」という部分に限ってみれば、スペシャリストであるペンギンのほうに分がある、というわけです。

ニシツノメドリやエトピリカウミガラスといったウミスズメ科の鳥類とペンギンを両方展示している水族館や動物園もいくつかあります(那須どうぶつ王国鴨川シーワールド葛西臨海水族園海遊館など)。機会があれば足を運んでみて、泳ぎ方を見比べてみるのも楽しいかもしれません。

 参考文献

 

独断と偏見のペンギン図鑑4:フンボルトペンギン

基本データ

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和名:フンボルトペンギン

英名:Humboldt penguin

学名:Spheniscus humboldti

体長:65〜70cm

分布:ペルー北部のフォカ島からチリのメタルキ島にかけての大陸沿岸部と周辺の島々

生息状況:準絶滅危惧種。推定個体数2万つがいほど

特徴1:日本代表

世界有数のペンギン飼育数を誇る日本であるが、その中核となっているのがフンボルトペンギンである。2016年に世界動物園水族館協会(WAZA)が中心となって、WAZAおよび6つの国・地域の関連組織(北米動物園水族館協会、欧州動物園水族館協会、前アフリカ動物園水族館協会、日本動物園水族館協会、南米動物園水族館協会、オセアニア動物園水族館協会)に所属する動物展示施設に飼育されているペンギンの種と個体数を調査した結果では、これら6つの組織の加盟施設で飼育されているフンボルトペンギンの総数が4834羽であるのに対し、日本動物園水族館協会の加盟施設で飼育されている数が1872羽であったという。およそ4割が日本で飼われていることになる。一国での飼育数ではぶっちぎりの第1位である。

日本国内で飼育されているペンギンの種類別で比較すると、2位のケープペンギン622羽の約3倍。いちばん少ないマカロニペンギン15羽の約125倍。日本で飼育されている全ペンギン総数の45%をフンボルトペンギンが占める。飼育・展示している施設の数もほかのペンギンに比べて圧倒的に多い。まさに日本を代表するペンギン。アジを投げればフンボルトペンギンに当たる。ペンギン大国ニッポンはほぼほぼ、フンボルトペンギン大国ニッポンなのである。

ペンギンは動物園、水族館の両方で飼育される動物であることから、飼育下繁殖プログラムに伴う個体の交換を通じて、普段あまり交流のない動物園と水族館をつなげる鎹となってきた。とくに個体数が多く、施設間での行き来の多いフンボルトペンギンは、その繋がりの軸になっているといえる。その意味でも、日本を代表するペンギンといえるかもしれない。

特徴2:温帯ペンギン

日本にこれほどたくさんのフンボルトペンギンがいるのは、彼らの生息地が日本の環境に近い温帯域だからである。日本の夏は多くのペンギンにとって暑すぎるが、フンボルトペンギンはもともと、最高気温が30度を超えるような場所にも住んでいる。

温暖な環境に適応するため、フンボルトペンギン(およびそのほかのケープペンギン属のペンギン)にはほかのペンギンにはみられない特徴がある。それは、頭部に広範囲の裸出部(羽毛の生えない領域)を持つということである。フンボルトペンギンの頭部のピンク色は、羽毛の色ではなく露出した皮膚の色だ。これにより熱を放散し、暑い場所でも体温が上がりにくくしているのである。体温が上がってきたときは、より熱を放散しやすくするために体表の毛細血管が拡張し、血流量が増えるので、肌のピンク色がより赤っぽくなる。

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日向にいるフンボルトペンギン。裸出部の赤みが強まっていることがわかる。口を開けているのも、呼気から熱を放散して体温を下げるための行動である。

おかげで日本でもほかのペンギンのように暑さにやられずにすんだのである。

また、温暖な気候で生活しているということは、温暖な環境下に存在する微生物に対しても抵抗力が強い、ということでもある。極地のペンギンを飼育する上での大きな問題のひとつは、彼らが人間の生活圏のほとんどに常在するカビ(Aspergillus fumigatus)にまるで抵抗力を持っていないということであった。南極は寒すぎて多くの微生物が存在できないため、極地ペンギンたちは微生物に対する抵抗力が弱い。そのためはじめのうち、ヒトであれば多かれ少なかれ日常的に胞子を吸い込んで平気でいるこのカビに肺を侵さればたばたと死んでいった。けれどフンボルトペンギンは温帯域で、さまざまな微生物に囲まれて生きている。だから微生物に対する抵抗力がより強く、感染症にかかりにくい。

このような特徴のために、フンボルトペンギンは極地ペンギンなどに比べて飼育管理がしやすく、繁殖もしやすかった(飼育員や獣医師の地道な努力があったのはもちろんだが、それはほかのペンギンについても同じことである)。そのおかげで、私たちは、日本全国津々浦々で、ペンギンを見ることができるのである。

特徴3:絶滅が懸念されるペンギン

そんなわけで、日本にいると、フンボルトペンギンはありふれた存在だと勘違いしてしまいがちだ。しかし、フンボルトペンギンはペンギン全体のなかでも、とくに絶滅が危惧される種類である。

フンボルトペンギンは、19世紀半ばには100万羽以上生息していたと考えられているが、19世紀後半以降、大幅に減少した。実際の生息数は明らかになっていないが、現在は4万羽ほどと推定されている。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約では附属書I類(国際商取引の全面禁止)に記載されている。

減少の大きな原因の1つは、巣穴を掘る土壌として利用していたグアノ(海鳥の排泄物が堆積して出来上がった土壌)が、生息地の多くの場所で肥料として採掘されたことだ。グアノの消失したむき出しの岩盤の上では巣穴を作ることができず、繁殖が困難となるし、グアノの採取は、成鳥や雛を直接殺すことはなくても、繁殖成功率を50%も低下させるという(現在ペルーではグアノの採掘を取り締まっており、採掘者の侵入を防ぐ壁を設け、一部には守衛を配置している)。

もうひとつの大きな要因は、魚粉業者との獲物(カタクチイワシ)をめぐる競合である。大規模が魚粉生産業によってカタクチイワシの資源量が減少し、十分に餌を取れなくなったことが、個体数減少に拍車をかけている。また、ペンギン自体が漁船の網にかかって溺死するなどの影響も出ている。

そのほか、一部のコロニーでは野生化した犬、猫、ネズミが脅威となっていたり、火力発電所の建設の影響が懸念されていたりする。沿岸の漁師たちが、ペンギンを直接食用として捕獲することもある(チリでは捕獲を禁じるモラトリアムが制定された)。人間に対して過敏に反応するため、エコツーリズムなどで訪れる人間も警戒し、繁殖率が低下することがあるという。

いずれも人間の活動に起因するものだ。叫ぶ60度の暴風圏に浮かぶ絶海の孤島に生息していたらここまで苛烈な影響は受けなかったかもしれないと思うと、人間の活動しやすい温帯域に生息していたことはこのペンギンにとって不幸だったのではないか、と思わなくもない。

特徴4:神の子に翻弄されるペンギン

フンボルトペンギンは、餌のほとんどを魚類に依存している。魚粉業者によるカタクチイワシの乱獲の影響をストレートに受けてしまうのもそのためだ。

生息地である南米大陸の西側の海には強い寒流であるペルー海流が流れており、沿岸域の海水温は同緯度のほかの海域に比べて7〜8度低い。そのため、この海域に生息するのは、緯度に反して冷たい海を好む魚種である。フンボルトペンギンは、この魚たちを食べている。

したがって、数年に1度、赤道方面から暖かい海水が流入して水温の上がるエルニーニョは、フンボルトペンギンの生活に大きな影響を与えることになる。

エルニーニョが発生すると、普段この海域に生息している魚たちは、より冷たい海を目指して南へ移動する。と、普段は近場の海で餌をとるフンボルトペンギンも、採餌のためにより南、つまりより遠くの海まで泳いでいかなくてはならなくなる。彼らの生活は、神の子の気まぐれに翻弄されているのだ。

エルニーニョが大規模になると、餌を求めて移動する距離が非常に長くなり、餌をとって繁殖地に戻ることができなくなるペンギンが出てくる。そうなると、雛を育てることができず、繁殖は失敗する。エルニーニョがあまりに大規模であれば、育っていたすべての雛が餓死する、ということもある。

親鳥自身も、十分に餌がとれずに餓死しうる。過去に発生した大規模なエルニーニョでは、個体数が70%以上減少したと報告されている。

とはいえ、これ自体は、ペンギンの生態に織り込み済みの行動だ。もとの個体数が100万あれば、エルニーニョによって大量死が起きたとしても、翌年以降リカバーできる。野生動物の暮らしというのは、概してそういうものである。

問題は、前述の要因によって、もとの個体数が極端に減ってしまった、ということである。もとの個体数が少なければ、大規模なエルニーニョが発生した時に、その影響を乗り越えることができないかもしれない(事実、1984年や1998年のエルニーニョはかなり危なかったようである)。近年の気候変動の影響により、エルニーニョの大規模化が予測されており、今後のエルニーニョフンボルトペンギンが乗り越えていけるのかどうかが懸念されている。

まとめ

フンボルトペンギンは、(少なくとも日本においては)動物園などで受ける印象と野生下での実態がもっとも大きく乖離したペンギンかもしれない。生息数が少なく珍しい、だから動物園でも珍しいというのであれば、希少な動物であることを認識しやすいけれど、動物園でもっともポピュラーな動物のひとつであるペンギンが、実は今にも絶滅しそうである、というのはなかなか想像しにくいものである。

日本で家畜の飼料や養殖魚用飼料、有機肥料として用いられる魚粉はチリやペルーから輸入される割合も多い。輸入量は年々減少しているものの、地球の裏側のフンボルトペンギンたちの生活に、私たちも関わっている、ということである(家畜の飼料や肥料に用いられるということは、間接的に私たちの口に入っているということだ)。

www.alic.go.jp

フンボルトペンギンは、様々な面で、私たちと関わりの深いペンギンである。

ありふれているからといって、見過ごすことだけは避けたい、と思う。

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「脱絶滅」に意味があるのか。M・R・オコナー『絶滅できない動物たち』

「人新世」という言葉がある。2000年にドイツの大気化学者ポール・クルッツェンが提唱した、地質時代の一区分を指す言葉である。完新世後の人類の大発展に伴い、農業や工業といった人類の活動が地球環境に大きな影響を与えるようになった時代と定義される。要するに現代のことだ。

いまや手つかずの自然というものは地球上に(少なくとも地上に)ほとんど存在しない。現代の気候変動に人為的要因が認められることを考慮すれば、たとえ前人未到の地であっても、人間の影響が及んでいない場所はない、ということになるだろう。

そのなかで、多くの生物が、絶滅の危機にさらされている。ケニアの古人類学者リチャード・リーキーが1990年代はじめに、「6度目の大絶滅」という言葉で懸念を表明したほどの大量絶滅は今のところ起きてはいないが、多くの生物と生態系に人為的影響が及んでいることは間違いがない。そのため、生物種を人為的な絶滅からいかにして守るかということに、大きな関心が寄せられている。

しかし、種を絶滅から守るための取り組みは、未だ試行錯誤のなかにある。絡みあう要素があまりにも多すぎ複雑すぎて、明快な方針を、とてもではないが出せる状態ではないのだ。種の保存のための取り組みに関して生じるさまざまな問いかけに、人類はまだ、きっぱりとした答えを与えることができていない。

M・R・オコナー著『絶滅できない動物たち』は、そのような、生物種の保全にまつわるさまざまな矛盾や疑問を、実際のいくつかのケースを念入りに取材しつつ掘り下げた本である。著者は、キハンシヒキガエル、フロリダパンサー、ホワイトサンズ・パプフィッシュ、タイセイヨウセミクジラ、ハワイガラス、キタシロサイ、リョコウバト、そしてネアンデルタール人の8つの保全(あるいは復活)プロジェクトを取材し、そこに内在する論点を洗い出していく。

いくつか例を挙げる。

第1章では、キハンシヒキガエルが主人公となる。タンザニアに流れるキハンシ川の、ある滝壺に生息していたカエルの仲間だ。

深刻な電力不足(震災で発電所が被災した後の被災地みたいな電力不足だ)に悩んでいたタンザニアは、ヒキガエルの住むその滝に、水力発電のためのダム建設を計画した。正確にいえば、建設に先立つ環境アセスメントのなかで、キハンシヒキガエルは新種として発見された。豊富な水量を持つ滝の滝壺という極めて特殊で限定的(同じ理由で、タンザニア政府もダムを作るならそこしかない、と考えた)な環境に生息するまさにそこにしか存在しないカエルで、ダムを作ることがそのままカエルの絶滅につながる恐れがあったため、このカエルをどうするのかで議論は紛糾した。最終的にダムの建設は進行し、キハンシヒキガエルは予想通り、数を減らしていった。ここから、ブロンクス動物園などを中心に飼育下繁殖プログラムがスタートする。一部のカエルが動物園へ運ばれ、厳重に管理された無菌室の中で育てられることとなった。しかし、なんとか累代飼育するノウハウが整ったところで、野生個体群をさらなる悲劇が襲う。カエルツボカビ病の蔓延である。これによって、野生のキハンシヒキガエルは完全に絶滅してしまう。

2012年に、飼育下で繁殖したカエルの再導入プログラムがはじまったが、状況は依然として予断を許さない。

この事例が問いかけるのは第一に、地域住民の利益と種の保存が相反するときに、どう判断したらいいのか、ということだ。希少なカエルが住んでいるのだからお前たちは電気を諦めろと言い切れる者は、多分人間ではないだろう。では、どこで折り合いをつければいいのか?

第二に、どの種を守り、どの種を切り捨てるのか、私たちに判断できるのか、ということだ。キハンシヒキガエルは、実は一度目の環境アセスメントでは発見されていなかった。発見されないままだったら、ダムの建設に伴い、人知れず絶滅して話題にもならなかったことだろう。たまたま新たな調査で見つけることができたから、人間はキハンシヒキガエルを保存することにした。種の存続を、そのような偶然に任せてよいものなのか?

第三に、再導入の試みが、本当に保全につながっているのか、ということだ。飼育下で世代を重ねたカエルたちは、遺伝子の多様性がもとより縮小しているし、飼育下という環境により適応したものが無意識的に選抜されているかもしれない。一方で生息地の環境もダムによって変化しており、再導入にあたって、建設前の湿度環境を再現するために人工スプレーシステムが設置されている。多額の予算を費やし(その予算でタンザニアの貧困をいくばくか改善できるかもしれない)、人工的な環境に、人工的なカエルを放すことは、本当に意味のあることなのか?

第2章で取り上げられるのは、フロリダパンサーである。その名のとおりフロリダ州に分布するこのピューマの亜種は、開発により生息地が狭められて個体数が減り、近親交配が進んで繁殖力をほとんど失ってしまい、絶滅の危機に瀕していた。そこで専門家たちは、遺伝的多様性を高め繁殖力を取り戻させるために、テキサス州西部に生息するピューマを数匹、フロリダパンサーの個体群に混ぜることにした。試みは功を奏し、以後、フロリダパンサーの個体数は少しずつ増え、近親交配による障害と思われる特徴もほとんど認められなくなった。

しかし、この解決策は議論をよんだ。テキサス州ピューマとフロリダパンサーとは別の亜種とする考え方も存在したため、その導入はフロリダパンサーに固有の遺伝子プールを撹乱することになるのではないかと懸念されたからだ。テキサスのピューマとの間で生まれた子どもの適応度がもとのフロリダパンサーの個体群の適応度を大幅に上回っていた場合、子どもの遺伝子が支配的となり、もとの個体群の遺伝子を事実上絶滅に追い込んでしまうかもしれない(ゲノム掃引とよばれる)。そうなればむしろ、多様性の喪失に手を貸すことになるかもしれない(事実、テキサスのピューマ由来の遺伝子は、想定を超えて広まっているかもしれないとも推定されている)。一方で、北米のピューマは1亜種にまとめられるという証拠もあり、また、フロリダパンサーとテキサス州ピューマは、人間によって生息地が分断される前には、遺伝子的交流があったと考えられる。とすれば、その交流を「人為的に再現する」ことに、とくに問題はないかもしれない。果たして現在のフロリダパンサーをどう捉えるべきなのか、完全なコンセンサスは得られていない。

この事例では第一に、人為的な個体の移動や「交雑」をどう捉えるかが問われている。テキサス州ピューマを導入したことは、フロリダパンサーにとって救済だったのか、(遺伝的な)絶滅への導きだったのか。そして、人為的な交雑と自然な交雑の境目をどこに引けばいいのか。保全生物学では、自然下での交雑は自然現象なので問題ないが、人為的な交雑は生態系の撹乱なので避けるべき、とされている(場合によっては交雑個体を殺処分、ということもある)。しかし、人間の活動が生息地の環境や気候にさえ影響を与えているなか、「ひょっとしたら人為による環境の変化の影響で交雑するようになったかもしれない(そうじゃないかもしれない)動物」が現れるようになり、自然と人為の境目は曖昧に溶け合っている。どこまでが許容される交雑で、どこからが許容されない交雑なのか。

第二に、減少の大元となった要因、すなわち開発による生息地の分断・縮小や、家畜を守るための害獣駆除が解決されないまま、個体数だけ増やすことの意味が問われている。生息地の条件がもとのままでは、同じように人為的な個体の導入を継続しなければ、遺伝的多様性を維持できないかもしれない。しかし、そのように人の手を借り続けなければいけないようなら、それは自然と言えるのか?

続く章でも、さまざまな問題点が指摘される。人為的に新たな環境に導入されたことで30年で新種に進化したホワイトサンス・パプフィッシュの章では、「人為の影響で生まれた種」をどう遇するのかという点、文化を持つ鳥であるハワイガラスの章では、飼育下繁殖、生殖細胞の保存などで生物学的に保全できたとして、文化が断絶してしまったら、それはもとの動物と同じと言えるのかという点、人間より寿命がはるかに長く、生態に不明な点の多いタイセイヨウセミクジラの章では、人為が生物に与える影響を人間は正確に見積もることができるのか、という点……。難しい問いに、次々とアンダーラインが引かれていく。

しかし答えは、はっきりとは書かれていない。それは私たち一人一人が、考えなくてはならないことだからだ。

人間が地球で生きていくのを諦めない限りは、地球上の限られた資源から、自分たちの取り分を(他の生物たちの取り分とトレードオフで)確保していくことになる。人間の力がここまで大きくなった現代においては、ほかの種が生きる余地を、私たちが意識的に作り出していく必要がある。種の絶滅を防いでも、その種が生きる余地が自然界に残っていなければどうしようもない。また、種を保存する過程で、人間は否応なく、その種に変化をもたらしてしまう。どうあがいても、我々は「自然」に介入し、改変してしまう。そのなかで「種」を不変のものとして保存することに、どれほどの意味があるのか。意味があるとして、それはどのように行われるべきなのか。

それは、気候にさえ影響を与えてしまう(伝説のポケモンかよ)私たちが、永遠の宿題として抱え続けなければならない問いなのだと、本書は教えてくれる。

無菌室の中で生きるキハンシヒキガエルがあだ花とならないためにどうすべきか、考えていきたいと思う。

絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ

絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ

 

 

勝手にガイドツアー:いろいろな魚の泳ぎ方(葛西臨海水族園)

実際の水族館の展示を素材にして勝手に架空のガイドツアーを行う企画第1段、今回は葛西臨海水族園の展示を見ながら魚の泳ぎ方について解説してみたいと思います。なお、タイトルの通り内容については私が独自に作っているものであり、葛西臨海水族園公式とは一切関係ありません。

魚はその形態や生態、生息環境に応じてさまざまな泳ぎ方をしますが、基本となるのは、体と尾鰭の両方を左右にくねらせて推進力を得る方法です。例として、「世界の海」の「地中海」水槽にいるブロッチドピカレルをご覧ください。

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後半身と尾鰭を振って泳ぎ、胸鰭を梶として用いていることがわかります。一般的に「魚の泳ぎ方」として思い浮かぶのがこれになるでしょう。タイなど、私たちが目にする魚の多くはこの泳ぎ方をしています。

ちなみに、これを横倒しにすると、ヒラメやカレイなどの泳ぎ方になります。「北海」水槽にカレイの仲間、プレイスがいますのでそちらを見てみましょう。

ヒラメやカレイの仲間は両目が体の片側に移動し、目のある方を上にして体を横に倒して泳ぐため、一見、空飛ぶ絨毯のような特殊な泳ぎ方をしているように見えます。しかしこれを縦にしてみると、さきほどのブロッチドピカレルなどと同じ泳ぎ方をしていることがわかるのではないでしょうか。

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さて、ブロッチドピカレルは沿岸域に生息する魚ですが、同様に沿岸域に生息する魚の中には、障害物の多い環境の中でより小回りを効かせるために、違った泳ぎ方をするものもいます。例として、「インド洋」水槽にいるサザナミハギをご覧ください。 

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体はあまり動かさず、胸鰭をオールのように使って泳いでいることがわかります。動画の中で、この個体は前後に移動しながら水草をつついていましたが、尾鰭ではなく胸鰭を使うことによって、鳥でいうホバリングのような、細やかな動きができるようになります。障害物を避けながら一定の場所にとどまって餌を食べる必要がある場合には、このような泳ぎ方が便利です。ただし、尾鰭を使う場合に比べてスピードは出ません。そのため、普段胸鰭を使って泳いでいる魚も、敵から逃げるときなどはブロッチドピカレルのような「基本型」の泳ぎをすることがあります。

逆に、外洋に生息している回遊魚などは、より高速で効率よく移動するための泳ぎ方をしています。ここで、葛西臨海水族園の主役でもある、「大洋の航海者」水槽のクロマグロに登場してもらいましょう。 

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いかがでしょうか。尾鰭を振って推進力を得るのは「基本型」と同じでも、より体幹のブレが少なく、真っ直ぐ泳いでいることがわかります。クロマグロなどの回遊魚は、力の逃げにくい堅い尾柄と水を捉えやすい大きなハの字型の尾鰭を持つことで、少ない動きで大きな推進力を得られるようになりました。これによって、体のブレを最小限に保ったまま、尾鰭の振りだけで速く力強い泳ぎができるようになっています。獲物の少ない外洋で長い距離を回遊しながら獲物を探し、いざ見つけたら素早く接近して仕留める、そのような暮らしに適した泳ぎ方をしているわけです。

さて、このような「どんな場所で暮らすか」以外の要素が泳ぎ方に影響を与えることもあります。

たとえば、「オーストラリア西部」の水槽にいるウィーディーシードラゴン。タツノオトシゴの仲間であるこの魚は、その名(weedy)の通り、海藻に擬態して暮らしています。

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この魚、潮の流れに流されるようにゆらゆらと動いていきますが、いったいどうやって推進力を得ているかわかるでしょうか。目を凝らしてみると、透明な背鰭と胸鰭を波打つように動かしていることがわかります。

せっかく体の海藻に似せているのに、ほかの魚のように体をくねらせて泳いだりしたら、「魚がいる」ことがバレてしまいますよね。そこでウィーディーシードラゴン(やそのほかのタツノオトシゴの仲間)は、動かす部位を最小限の鰭だけにして、より海藻らしく見せているのです。

このように、魚たちは自らのおかれた条件に合わせてさまざまな泳ぎ方をして、環境に適応しています。葛西臨海水族園にはほかにもたくさんの魚がいて、ここに取り上げていない泳ぎ方をしているものもいますので、ぜひぜひいろいろな水槽を覗いて、魚たちがどんな泳ぎ方をしているか、注意してみてください。

www.tokyo-zoo.net

ペンギンの食事について

動物の体の作りや行動には、その動物が歩んできた進化の「れきし」と、その動物が今、営んでいる「くらし」が色濃く反映されています。「れきし」や「くらし」を知ることで、その動物について、より深く、理解することができるようになります。

動物たちの「くらし」のなかでもっとも大きな比重を占めるのは、「エネルギー摂取」、つまり「食事」でしょう。どんな食べ物をどのようにして食べているかは、その動物の体のつくりや行動に大きな影響を及ぼします。

そこで今日は、ペンギンの「食事」について、触れてみたいと思います。

野生のペンギンは何を食べているのか?

生活のほとんどを海中で送る海鳥であるペンギンは、もちろん、食べ物も海の中で得ています。アジやイワシなどの魚類、イカやタコなどの頭足類、オキアミやヨコエビなどの甲殻類といった海の動物が主な食べ物です。

これら海の動物のうち特定のものしか食べられない、というコアラのような偏食のペンギンはいないものの、どれを主食とするかは、種類によって違うようです。ケープペンギンやフンボルトペンギンなどは小型の魚類への依存度が高く、南極周辺のペンギンたちにとっては、この海に膨大に発生するナンキョクオキアミが重要な食べ物となっています。オウサマペンギンはイカをよく食べる、というような報告もあります。

動物園・水族館ではペンギンに何を与えているのか?

動物園・水族館では、入手・管理のしやすさから、アジやイワシ、キビナゴなどの小魚やイカを与えていることが多いようです。年や季節によって特定の魚がたくさん獲れたり獲れなかったりしますから、様々な魚種を組み合わせて、偏りが出ないように与えているそう。たいていの動物は新しい食べ物に遭遇したとき、はじめは少しずつしか食べなかったり、まったく食べなかったりします(これを「ネオフォビア(新奇物忌避)」と呼びます。その食べ物に実は有毒成分が含まれていた場合などに備えた適応と言われています)。猫を飼っていて、病気などの理由で食事を変更しなくてはいけなくなったとき、なかなか食べてくれなくて困った、という経験をしたことはないでしょうか。ペンギンも同じように、新しい食べ物は受けつけてくれない恐れがあるため、それまで与えていた食べ物が手に入らなくなってしまった場合に備えて、日頃からさまざまな食べ物を与えるようにしているそうです。

www.enosui.com

seapara.jugem.jp

これらの食べ物は週に1〜数回決まった日にまとめて業者から購入され、施設内の冷凍室で保管されます。そこから、毎日必要な分だけ解凍され、ペンギンたちに与えられます。栄養成分の変性を極力防ぐため、加熱器具などは用いず、流水下で半日ほどかけて自然解凍することがほとんどです。

ただ、それでも保存・解凍の過程で、とくに水溶性ビタミン(ビタミンB群、C)やミネラルなどは失われることが多く、そのためこれらの栄養素はサプリメントで補給しています。ペンギンは食べ物を丸呑みにするので、カプセルなどにサプリメントを入れて魚の中に埋め込んでおけば、そのまま食べてくれるようですね。

推奨される食事については、アメリカ動物園水族館協会(AZA)などが資料を提供しています。

nagonline.net

ペンギンの雛は何を食べているのか?

鳥類であるペンギンは哺乳類のように母乳が出ないので、卵から孵った雛たちは親鳥が食べて消化したものを口移しで食べさせてもらいます。特殊な例として、コウテイペンギンの雄は雛が孵ってから雌が戻ってくるまでの間、食道から分泌される「ペンギンミルク」と呼ばれる分泌物を雛に与えます。

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雛に食べ物を吐き戻して与えるオウサマペンギン

動物園・水族館で飼育されている場合も、親鳥が子育てをする場合は同様です。しかし、なんらかの理由で人工哺育をしなければならなくなった場合には、小魚やオキアミをミキサーですりつぶし、ペースト状にしたものを与えているそうです。

www.nagoyaaqua.jp

ペンギンはどのようにして食べ物を捕らえるのか?

では、海のなかでペンギンたちは、どのように食べ物を捕えているのでしょうか。

採餌旅行

ペンギンが海へ食べ物を探しに出かけることは、採餌旅行と表現されることが多いです。

採餌旅行の長さは、種類や時期よって違います。たとえば産卵直後のコウテイペンギンの雌は110日間かけて1100kmほども移動しますが、ガラパゴスペンギンでは1日8時間ほどの採餌旅行で毎日コロニーへ帰り、海岸線から1.1km以上離れた場所まで出かけることは滅多にありません。このような違いには、食べ物の手に入りやすさや一度に必要となる量などが影響しているのではないかと考えられます。

マゼランペンギンでは、採餌旅行に一定の計画性が認められています。彼らは周辺の海の資源量に応じて近くで獲物をとるか、遠くまで出かけるかを決めていますが、遠くで獲物をとるために出発するときは、近くで獲物をとるときよりも早い時間に海に出るのだそうです。マゼランペンギンは、出かける前から、その日、どこまで採餌旅行に出かけるかを決めているようなのです。

採餌潜水

 採餌旅行に出たペンギンは、3つの泳ぎ方で獲物までたどり着きます。ひとつめは移動潜水。水面下の浅いところを水平に泳ぎます。このとき、息継ぎをしながら「イルカ泳ぎ」をすることもあります。餌場近くまでくると、バウンス潜水をはじめます。これは、水面から深い角度で潜行し、一定の深さまで潜ったらそのまま真っ直ぐ引き返してくる潜水で、これによって餌場を探ります。最後に、「ここで獲物を捕る」と決めたら、「採餌潜水」に移ります。このときは一定の深さまで潜った後、水平に泳ぎ回って獲物を捕まえます。

このとき、ほとんどのペンギンは、獲物より少し深いところまで潜って、下から獲物を捕まえるようです。こうする理由として、ひとつは自分の影で獲物に気づかれないようにするため、もうひとつは逆に獲物の影を見つけやすくするため、さらに、獲物を追う際に浮力を利用して最小限の力で加速できるため、といった説が考えられています。

採餌潜水でどれくらいの深さまで潜るかも、種によって異なります。オウサマペンギンは比較的深く潜る傾向があり、水深220mを超える深海で獲物をとることも珍しくないようです。逆にガラパゴスペンギンはほとんどの場合、2.7mより深く潜ることはありません。

ペンギンの潜水において興味深いのは、彼らは潜る前に「どのくらいまで潜るか」をあらかじめ決めているということです。

ペンギンは肺呼吸をしていて体内に空気を含んでいますから、海水よりも比重が小さく、何もしなければ浮力によって水に浮きます(私たちと同様です)。ペンギンが海に潜るときは、羽ばたく力で浮力に抗って潜っていかなければいけません。しかし、潜れば潜るほど、体内の空気は水圧によって圧縮され、その分、浮力が小さくなります。そして、ある深さで、浮力と、体を下へ引っ張る重力とが釣り合って、「何もしなくてもその深さに止まることができる」ようになります。このときの浮力を「中性浮力」と言います。中性浮力のはたらく深さにいるときは、泳ぐエネルギーをほぼ、水平移動に費やすことができます。そこでペンギンは、獲物を捕まえるときの効率を高めるために、ちょうど獲物のいる深さ(厳密にいえば、少し下?)で中性浮力が得られるよう、潜水前に吸い込む空気の量を調節しているのです。ということは、彼らはあらかじめ、「どのくらいの深さまで潜るか」を決めてから潜っているということになります。採餌潜水の前に行われるバウンス潜水は、その際の情報を集めるためのものと考えられます。

水中でのペンギンの行動には、効率よく食べ物を入手するための工夫が備わっているのです。 

食事に適応したペンギンの体のつくり

獲物を捕らえるための特徴

もちろん、ペンギンの体のつくりにも、海の中で食べ物となる動物を捕らえるためのさまざまな特徴が備わっています。

まずは嘴。ペンギンの嘴は左右に扁平で、水中で開閉したときに抵抗が少ないようになっています。また、種によって比率は様々ですが長く前方に伸びています。これらの特徴によって、水中で逃げ回る魚などを捕えやすくなっているのです。

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オウサマペンギンの嘴。前方に長く伸びている。

また、口腔の形態にも特徴があります。鳥類であり歯を持たないペンギンは、その代わりに口の中の粘膜に、口の奥に向かうトゲ状の突起がたくさん生えていて、捕えた獲物を逃しにくいようになっています。

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ケープペンギンの口の中。口の奥に向かってトゲ状の突起が並んでいる。

さらに、上の写真でもわかるとおり、嘴が左右に扁平であり、目が顔のやや前方を向いてついていることから、ペンギンは、顔の正面をしっかりと両目で見ることができます。これによって対象との距離を正確に把握することができ、獲物を捕まえやすくなっています。ペンギンの両眼視可能な視野は、猛禽類であるフクロウと同じくらいあるそうです。

ペンギンの白と黒の体色も、獲物を捕らえる際に役立ちます。白いお腹は、ペンギンよりも深い場所にいる獲物から見たとき、空の明るさに紛れて見えにくくなります。黒い背中は、逆にペンギンよりも浅い場所にいる獲物から見たとき、海底の暗さに紛れて見えにくくなります。これによって、接近を獲物に気づかれにくくしているのです。

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白黒の体は巧みな擬態

この体色は、逆にペンギンの捕食者から身を守るのにも役立ちます。このような工夫は外洋で生活する生き物にある程度共通しているようで、ペンギンに限らず、マグロなども同様の色合いをしています。

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クロマグロも体の背中側が黒く、お腹側が白い

食べ物を保存するための特徴

前述のとおり、ペンギンは半消化状態の食べ物を吐き戻して雛に与えます。そのため、食べたものをすぐには消化しきらずに、胃の中に蓄えて置かなくてはいけません。パフィンのように嘴にたくさんくわえたり、猛禽類のように足でつかんで持ち帰ることができませんし、ペンギンはそ嚢(食道が変化してできた袋状の構造で、食べ物を貯蔵するために使われる)を持っていないので、獲物を捕らえてから巣に帰るまでのあいだ、胃の中にとどめておく必要があります。とくにコウテイペンギンなどのように一度の採餌旅行が長期にわたるペンギンでは、相応の工夫が必要です。

工夫のひとつとして、ペンギンは、採餌後から上陸後しばらくのあいだ、胃のpH(液体の酸性の強さを表す指標で、数字が小さいほど酸性が強いことを意味します)を消化時の5より高い6に保っておくことができます。胃の中で食べ物を分解する酵素であるペプシンは、ある一定のpH環境(この場合はpH5)以外ではそのはたらきが低下するため、これによって食べ物の消化が進みすぎるのを防ぐことができます。

しかし、ペンギン自身が消化をしなくても、長期間、恒温動物の体内のような温かい環境に食べ物を置いておけば、細菌などのはたらきでどんどん食べ物は分解されていきます。端的にいえば、腐敗していきます。これでは食べ物として雛に与えることはできませんし、体内に腐敗したものを貯蔵していれば親鳥の健康も害されてしまいます。オウサマペンギンのようにとくに長期間、食べ物を貯蔵しておかなければならないペンギンは、これにも対応しなければいけません。

オウサマペンギンを対象にした研究では、抱卵中、絶食している雄の胃ではスフェンシンと呼ばれる抗菌物質が分泌されており、このはたらきで胃内の細菌のはたらきが抑制されていることがわかっています。スフェンシンはとくに、強力な耐性菌の発生が問題視されているStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌。耐性菌MRSAが有名)や、Aspergillus fumigatus(肺アスペルギルス症の原因菌。ペンギンの感染症としても有名)に有効で、このはたらきによって、オウサマペンギンは胃の中の食べ物と自分の体を守っていると考えられています(スフェンシンには、耐性菌の発生を抑制する仕組みまで備わっているそうです。すごい)。

ペンギンは味を感じる?

味覚は、食べ物について多くの情報を与えてくれます。甘味は糖分の存在を、塩味は塩分の存在を、旨味はアミノ酸の存在を、苦味は有毒物質の存在を、酸味は腐敗物質の存在を示す記号になっているとされ、食べてよいものか、どんな栄養が得られそうかについて検討する手がかりとなります。「食事」に関わる重要な感覚です。

味覚は食べ物と密接に関わっている分、動物の食性によって違いがあることがあります。たとえば猫は、甘味を感じることができません。完全肉食動物であり、主に蛋白質と脂質からエネルギーを得ているため、甘味を感じ、糖分の存在を検知することができなくても、生存に支障がなかったためであると考えられています(猫がホイップクリームを好むのは、甘いからではなくて脂肪分たっぷりだからです。不都合な真実)。

では、ペンギンはどうでしょうか。ペンギンの遺伝子を調べたところ、旨味や苦味を感じるための遺伝子が失われているらしいことがわかっています。アデリーペンギンコウテイペンギンでは甘味を感じる遺伝子もなくなっており、ひょっとするとほかのペンギンも同様に、甘味を感じることができないかもしれません。

ペンギンがこれらの味覚を失った理由は判然としませんが、甘味・旨味・苦味に関わるある蛋白質は低温下では活性が低下することがわかっており、寒い地域で生活するペンギンでは機能せずに、進化の過程で失われてしまったのではないかという説があります。魚などを食べる生活ではこれらの味覚が必要なかったため、失われても問題がなかったのではないかとも考えられています。

食事と生息状況

外部からエネルギーを取り入れなければ、動物は生きていくことができません。したがって、食事は、ペンギンの生息状況にも大きな影響を与えることになります。

たとえば、食べ物のほとんどをペルー海流に乗ってやってくるカタクチイワシなどの小魚に依存しているフンボルトペンギンは、このペルー海流が変化するエルニーニョの発生により個体数が変動します。エルニーニョが発生すると、コロニーのある場所からより遠くの冷たい海までいかなければ食べ物が得られなくなり、採餌旅行にかかる時間が長くなります。それが限界を超えると、巣に帰ることができなくなり、待っていたパートナーも子育てを断念せざるを得なくなってしまいます。エルニーニョの発生した年には、すべての雛が餓死してしまったコロニーも報告されているほどです。

それでも、これまでフンボルトペンギンたちは、エルニーニョとうまく付き合いながら生きてきました。しかし、巣穴を作っていたグアノの土壌が肥料として根こそぎ採取されて子育てができなくなったり、漁業によって食べ物となる魚類が減少し、通常時でも餌が得にくくなったりすることで、フンボルトペンギンの個体数は大きく減少し、エルニーニョによる打撃をカバーできるかどうか怪しい状態にまでなってしまいました。そのため、大きなエルニーニョが発生した場合にそれを乗り越えられるのか、懸念されています(気候変動により、エルニーニョの影響そのものが大きくなっているという懸念もあります)。

また、アデリーペンギンではナンキョクオキアミの資源量と繁殖の成功率の相関関係があることがわかっています。気候変動によりナンキョクオキアミの資源量が減少し、それを追いかけるようにアデリーペンギンやヒゲペンギンの数が減少した事例も報告されています。

natgeo.nikkeibp.co.jp

まとめ

このように見ていくと「食事」はペンギンのさまざまな特徴と密接にかかわっていることがわかります。「何を食べているか」は、基本的な問いかけのようで、実は奥が深いものです。調べてみると面白い発見がたくさんあるので、ぜひぜひ皆様にも、掘り下げてみてもらえたら、と思います。

参考文献

ペンギン・ペディア

ペンギン・ペディア

 
新しい、美しいペンギン図鑑

新しい、美しいペンギン図鑑

 

独断と偏見のペンギン図鑑3:アデリーペンギン

基本データ

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和名:アデリーペンギン

英名:Adelie penguin

学名:Pygoscelis adeliae

体長:70〜73cm

分布:南極周辺、南極大陸沿岸と、ロス海のロイズ岬から北へプーペ島までの大陸周辺の島々

生息状況:準絶滅危惧種。237万つがいほど。

特徴1:ザ・ペンギン

アデリーペンギンは、「ペンギンのイデア」のようなペンギンである。試しに、ペンギンのそれほど詳しくない家族や知人に、ペンギンの絵を描くように頼んでみてほしい。十中八九、お腹が白、背中が黒の、アデリーペンギンのようなペンギンを描くはずだ(残りの一、二はコウテイペンギンのヒナのようなペンギンを描く)。同様に、何ペンギンが明示されていない漠然とした「ペンギン」のキャラクターはおおむねアデリーペンギンの姿をしている。JR東日本ICカードSuicaのマスコットキャラクターもアデリーペンギンなら、クールミントガムのパッケージに描かれているのもアデリーペンギンだし、『ペンギン・ハイウェイ』で暴れまわるのもアデリーペンギンだ。ペンギンと聞けば、少なくとも日本人ならばほとんどの人がまずこの姿を思い浮かべる。 南極にしか生息していない、人類とはもっとも縁遠い生物のひとつでありながら、人間と隣り合わせで生活しているケープペンギンやコガタペンギンを差し置いて、ペンギンらしさの象徴となっている。それがアデリーペンギンである。

これは一般的に、「ペンギン=南極」のイメージが持たれていることと不可分ではないように思う。

ホシザキ株式会社のペンギンライブラリーにはこのような記述がある。

1910~12年に南極探検を行った白瀬隊日本で初めて南極探検に挑み、ロス海到達後、犬ぞりで南緯80度5分・西経156度37分の地点まで辿り着いたは、わずか204トンの帆船で南極ロス海到達という快挙を果たし、国民的英雄として日本に戻った。彼らが持ち帰ったアデリーペンギンの写真や映像、そして剥製(はくせい)が、南極探検の快挙とともに伝えられ、ペンギンの存在が国民に広く知られることとなった。

また、作家の川端裕人さんは、『ペンギン、日本人と出会う』(文藝春秋)の中で、こんなことを書いている。

戦後、南氷洋捕鯨捕鯨オリンピック)や南極観測(科学者たちへのオリンピック)への参加が、国威発揚の一環として熱狂的に支持されていた時代があった。この時、南極の生き物の代表格と考えられていたペンギンは、見知らぬ世界への夢を担う立場に立たされた。

国を挙げて南極に情熱を傾けるなかで、捕鯨船や観測隊によって持ち帰られる「ペンギン」のイメージ(ときにはホンモノ)が、私たちの集合意識に、「ペンギン=アデリーペンギン」の図式を作り上げていった。そう考えれば、決して動物園・水族館での飼育数も多くないアデリーがペンギンの象徴となったことにも納得できる。同じく南極に暮らすコウテイペンギンでなかったのは、南極進出では出遅れた日本がなんとか確保できた昭和基地周辺に、コウテイペンギンのコロニーがなかったためだろう。イデアとしてのアデリーペンギンは、日本人が南極に向ける、夢と妥協の産物なのかもしれない。

特徴2:世界でいちばん元気なペンギン

ペンギンと聞いてアデリーペンギンを連想してしまうのは、日本に限ったことでもないようだ。世界一有名なペンギンであろうピングーも、コウテイペンギンという設定でありながら見た目はほとんどアデリーペンギンである。

見た目どころか、キャラ設定自体がアデリーペンギン的と言える。ピングーのキャッチコピーは「世界でいちばん元気なペンギン」だが、これはアデリーペンギンにこそふさわしい形容だろう。

アデリーペンギンのコロニーは非常に騒がしいという。とくに巣作りの時期などは、至るところで喧嘩が起こる(多くの喧嘩は、2羽以上のペンギンが巣材に用いる小石を奪い合うことで起こる)。浮気現場が見つかったときの修羅場もすごい。『新しい、美しいペンギン図鑑』(X-Knowledge)にはこんな記述が出てくる。

オスが他のメスと一緒になろうとしているのを前年のパートナーだったメスが見つけると、当然、大喧嘩となる。噛んだり蹴ったり、骨張った翼で素早く叩きまくったり、攻撃手段を選ばない取っ組み合いだ。(中略)喧嘩があまりに激しいので、撮れた写真はほとんどぶれているのだが、後で見てみたら(中略)、カンフーのような跳び蹴りで相手を倒しているシーンまであった。

そのほか、縄張りに入ってきたほかの個体は雛であっても容赦なくどつきまわすし、卵や雛を襲う天敵であるオオトウゾクカモメ相手にも果敢に立ち向かっていく。自分よりずっと体の大きな(そして無害な)コウテイペンギンの雛であっても、邪魔だと思えば追い立てる。なんともアグレッシブなのである。

まさしく、「世界でいちばん元気なペンギン」。いや、これを「元気」と言っていいのか定かではないけれど。


Penguin chicks rescued by unlikely hero | Spy in the Snow - BBC


Adelie Penguin Slaps Giant Emperor Chick!

特徴3:情熱的な名前

アデリーペンギンの「アデリー」は、はじめて発見された場所である南極の「アデリーランド」に由来している。この土地の名前は、フランス人探検家ジュール・デュモン・デュルヴィルが自分の妻の名前、アデルにちなんで命名したものだ。アレクサンダー・フォン・フンボルトやフィリップ・ラトリー・スクレーターなど男性の研究者・探検家の名前に由来するペンギンはほかにもいるが、女性名、しかも「妻」というパターンはペンギン全18種中アデリーペンギンだけである。

自分の探検した土地に、自分の妻の名前をつける。さすがフランス人、なんというロマンチスト、なんという愛の重さ。日本人だったら、ちょっとひく。それに、この後離婚なんてしてしまっていたら、腫れ物じみた雰囲気が土地周辺に漂うことになる。大丈夫だったかジュール。あと、アデルの性格がちょっと気になる。言霊というものを信じるわけではないが、アデリーペンギンみたいな性格だったら大変だ。大丈夫だったかジュール。だから探検に出ちゃったのかジュール。

特徴4:やっぱりかわいい

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白いアイリングが表情を愛らしくする

性格がいささか攻撃的に過ぎるきらいはあるものの、そのシンプルなカラーリングも相まってアデリーペンギンはやっぱりかわいい。好奇心旺盛な性格からもたらされる南極観測隊や研究者の語るエピソードや、水族館の展示での賑やかな様子にはほっこりさせられる。せわしなく動き回って来園者の笑いをとっているのも、たいていはこのペンギンである。ペンギンの代表格として人々の意識に焼き付いているのも、無理からぬことのように思われる。

まとめ

私がアデリーペンギンに対して抱いている印象をまとめると、「引き出しの多いエンターテイナー」というところである。上で紹介した動画でも、コウテイペンギンの雛を襲っていたオオトウゾクカモメを追い払って雛を守ったと思ったら、今度はコウテイペンギンの雛を追い立てはじめて「お前なんなんだよ」と突っ込まずにはいられないし、探せば探すほどネタが出てくる。猫と同じように、活発で好奇心旺盛な分だけ突っ込みどころも多い。気がつくと、「見るだけで笑ってしまう」ように順化さえされてしまう。非常におもろいペンギンであると思う。

名古屋港水族館など、大きな群れで飼育されている施設に行くと、その「おもろさ」が楽しめると思う。ぜひぜひ会いに行ってみてほしい。

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アデリーペンギンの見られる動物園・水族館

アドベンチャーワールド八景島シーパラダイス名古屋港水族館海遊館

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ペンギン、日本人と出会う

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動物の心に迫る本。日本動物心理学会監修『動物たちは何を考えている?』

私は今、2匹の猫と暮らしている。

猫たちを眺めていると、ときに物思いにふけるような顔で外を見ていたり、見慣れないおもちゃを前にどうしたものかと思案しているような様子を見せたりと、内面の動きを感じさせる様子が見られることがある。高いところによじ登ったはいいものの降りれなくなってしまって困り顔をしていたり、「脳みそついてるのかな?」と疑うようなこともしばしばある。この子たちは日々、何を感じ、考えて生きているのだろう(あるいは何も考えていないのか)と、いつも思う。いったい、動物たちの心の中は、どんな風になっているのか。それは、動物に関わる者が多かれ少なかれ持っている疑問だろう。

それを追求するのが、動物心理学という学問だ。この分野の研究者たちは、いろいろな工夫を凝らして、物言わぬ動物たちの心を読み取ろうと、日夜研究を続けている。

日本動物心理学会監修の『動物たちは何を考えている?』(技術評論社)は、そんな動物心理学のさまざまな研究成果を、コンパクトにまとめた本である。

第1章では、動物心理学という学問が何を目指しているのかについて、詳細に語られる。簡潔に言えば、この学問は、動物の心のありようを知ることによって、心がどのように進化してきたのか解き明かすことを目指している。それはひいては、私たちヒトの心を解き明かすことにもつながる。それが、究極の目的となる。

第2章では、動物の心を知るための手法について語られる。前述のように動物は言葉を発しない。だから、考えていること、感じていることを説明してもらうことはできない。では、どうすれば、彼らの心を知る(正確に言えば推測する)ことができるのか。研究者たちが編み出してきた観察の「コツ」が解説される。

第3章以降では、1、2章を踏まえたうえで、知覚や学習、思考、社会性など、さまざまな観点からの研究成果を、具体的に説明していく。「叱る」しつけはどれほど有効なのか、動物は音楽や絵を理解するのか、ヒトの言葉は覚えられるのか、文化を持つのか、「自分」や多個体をどのように認識しているのか。そういったいろいろな疑問について、制作時点での最新の研究成果に基づいて解説される。登場する動物は、チンパンジー、ハト、ラット、カラス、アライグマなど多岐にわたり、それらの違いについても教えてくれる。

これらの内容を読んで痛感するのは、「心のありようは一通りではない」ということだ。

私たちはつい、ヒトという動物の心のありようを基準に考え、ほかの動物にもそれを当てはめがちだ。また、ヒトがもっとも「発達した」心を持っていて、ほかの動物はそれより劣っている、と判断しがちでもある。けれど、本書を読むと、ヒトの心のありようも、動物が持ちうるさまざまなバリエーションのひとつでしかないことがわかってくる。たとえば鳥類は、空を飛ばなければならないという制約から、哺乳類のように脳を大型化することができない。だから、哺乳類とはまったく異なる方法で認知機能を発達させてきた。哺乳類は脳にしわをたくさん作り、表面積をどんどん大きくすることで神経細胞の数を増やし、認知機能を向上させてきた。だから俗に、しわが多いほど賢いなどと言われるが、鳥の脳はつるんとしている。では知能が劣るのかと言えばそんなことはない。ヨウムカレドニアガラスが類人猿顔負けの知性を持ち合わせていることは、今では多くの人に知られているだろう。鳥類は、哺乳類の大脳新皮質(いわゆる脳のシワのあるところ)で行われている演算をまったく別の部位で処理していることがわかっている。そこまで違うとすれば、もはや優劣を論じること自体が無意味かもしれない。また、高速で空を飛ぶ、という生活に対応するためか、鳥類の脳はヒトの脳とは違った仕方で世界を捉えている。たとえば本書によれば、エビングハウス錯視ツェルナー錯視では、ハトはヒトと真逆の「錯覚」をするという。とすれば、ヒトの心を単純に鳥類に外挿することもナンセンスといえる。

もっとヒトに近いチンパンジーでも、たとえば数の認識の仕方がヒトとは異なることを示唆する研究が紹介されている。ページをめくるごとに、動物の心の世界は想像以上に奥が深いことを思い知るだろう。

紹介されている研究は限られたものであるし、そもそも動物の心のありようは未だ「ほとんどわかっていない」と言ったほうがいい状態ではある。それでも、本書の内容は、多くの気づきをもたらしてくれる。

うちの子はひょっとしてバカなんじゃないだろうか……と疑ってしまったときに(よく疑う)読んでみると、ちょっと穏やかな気持ちになれるかもしれない。

動物たちは何を考えている? -動物心理学の挑戦- (知りたい! サイエンス)

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