埼玉県こども動物自然公園「ペンギンヒルズ」
埼玉県こども動物自然公園は、1980年に開園した埼玉県最大の動物園です。200種1600点の動物が展示されており、日本では9園でしか展示されていないコアラも見ることができます。
そんな埼玉県こども動物自然公園の目玉展示のひとつが、世界最大級のフンボルトペンギン生態園「ペンギン・ヒルズ」。チリのチロエ島にあるプニウィル保護区をモデルに、フンボルトペンギン本来の生息環境を再現した屋外展示です。
ペンギンは南極の生き物、というイメージが強く、過去には動物園や水族館でも、種類にかかわらず氷山を模した展示でペンギンを展示することがほとんどでした。しかし、実際に南極大陸に分布するのは、全19種のペンギンのうちコウテイペンギン、アデリーペンギン、ジェンツーペンギン、ヒゲペンギンの4種のみ。ほとんどのペンギンは、氷山とは縁のない場所で暮らしています。なかでもフンボルトペンギンの生息地は、およそ南緯5度から南緯42度という日本とほぼ変わらない温帯域です。彼らは、南極の氷の上ではなく、ペルーやチリの草原や林の中に、穴を掘って巣を作り、暮らしています。「ペンギン・ヒルズ」はそんなフンボルトペンギン本来の暮らしぶりを知ることができる施設なのです。
しかも、来園者は展示の中へ入り、手を伸ばせば届きそうな距離で彼らを観察することができます(実際には、ペンギンに触ったり彼らの邪魔をしてはいけません)。もちろん、日本でもっとも飼育頭数が多く、馴染みの深いフンボルトペンギンについて、もっともよく知ることができる、そんな施設といえるでしょう。
「ペンギンヒルズ」は、2011年にチリ共和国のサンチアゴ・メトロポリタン公園から「フンボルトペンギン生息域外特別保全施設」の指定を受けました。また、同じく2011年に、市民ZOOネットワークが主催する「環境エンリッチメント大賞」(動物福祉、動物本来の姿を見せるという動物園の指名に基づき、飼育動物のための展示環境づくりに尽力した動物園・水族館に送られる賞)の施設賞を受賞しています。日本でペンギンといえばここ、といえる施設かもしれません。
こんな姿もなかなかみることができないでしょう。
片野ゆかさんの『動物翻訳家』(集英社)では、このペンギンヒルズがどのような経緯で、どのような思いのもとに作られたのか、担当飼育員への取材をもとに詳しく綴られています。読んでみると、ペンギンヒルズでの体験がより深いものになるかもしれません。
埼玉県こども動物自然公園 Saitama Children's Zoo