ペンギンの話

ペンギンのことをつらつら書いていきます。

ジェンツーペンギンの亜種のこと。

ジェンツーペンギンPygoscelis papuaは、2つの亜種*1に分かれるとされている。南緯60度までの亜南極の島々(フォークランド諸島、サウス・ジョージア島、ケルゲレン島、ハード島マッコーリー島、スタテン島)で繁殖するキタジェンツーペンギンPygoscelis papua papuaと、南極半島、サウス・シェットランド諸島サウス・オークニー諸島、サウス・サンドウィッチ諸島で繁殖するミナミジェンツーペンギンPygoscelis papua ellsworthiの2亜種である。

両者は形態の違いから区別され、ミナミジェンツーペンギンはキタジェンツーペンギンに比べて小柄で、嘴も小さいとされている。また、遺伝子的な違いも調べられており、フォークランド諸島から南極半島へとつながる弧状列島(Scotia Arc)に分布する島々では、フォークランド諸島の個体(キタジェンツーペンギン)とそれ以外(ミナミジェンツーペンギン)とで違いがみられたそうである。

Population structure and phylogeography of the Gentoo Penguin (Pygoscelis papua) across the Scotia Arc

この亜種分けはIOC World Bird Listや現在刊行されている図鑑などにも記載されており、 日本動物園水族館協会(JAZA)でも、2亜種を区別している(亜種の記載がなく登録されている施設もある)。

JAZAのデータベースによれば、キタジェンツーペンギンを飼育しているのは旭山動物園豊橋総合動植物公園、のいち動物公園小樽水族館登別マリンパークニクス八景島シーパラダイス、ミナミジェンツーペンギンを飼育しているのは那須どうぶつ王国アドベンチャーワールド男鹿水族館GAO南知多ビーチランド海遊館、しまね海洋館である。

というわけで、2つの亜種はここが違う、ということを、写真付きで紹介できればと思ったのであるが、頭を抱えている。

八景島のジェンツーペンギン(キタジェンツーペンギンということになっている)の写真と、海遊館のジェンツーペンギン(ミナミジェンツーペンギンということになっている)の写真を並べてみても、違いがよくわからない……(亜種の違いを意識して撮ったわけではないからわかりにくいのかもしれない)。

f:id:aoihyuuga:20190205202725j:plain

キタジェンツーペンギンとされる個体(八景島シーパラダイス

f:id:aoihyuuga:20190206155310j:plain

ミナミジェンツーペンギンとされる個体(海遊館

さらに、調べてみたら、これとは異なる形で、ジェンツーペンギンが2つのグループに分かれていることを示唆する研究もみつかった。

The biogeography of Gentoo Penguins (Pygoscelis papua)

それによれば、大西洋側に分布するものとインド洋側に分布するものとのあいだに遺伝的な違いがあり、逆に、現在の形態に基づく亜種分けは、遺伝子的には支持されないという。

どうなっているんだ。

ジェンツーペンギンは私がいちばん好きなペンギンであるが、まだまだ知らないことがたくさんある。

精進せねばならない。

*1:種として独立させるほど大きくはないが、変種とするには相違点の多い生物の一群のこと