ペンギンの話

ペンギンのことをつらつら書いていきます。

動物の言葉を知ろう。ジャニン・M・ベニュス『動物言語の秘密』

たとえば猫というのは人間には理解しがたい行動をしばしばとる生き物ですけれど、その行動の多くには、きちんと意味があります。

猫が私の手にコツンと頭突きをしてきたら、それは親しい仲間への猫流の挨拶。撫でてやるとゴロゴロ言いながら前足をぐーぱーするのは、子猫のころ、母乳の分泌を促すために母猫の乳腺を前足で揉んでいた名残で甘えているしるし。見たくもない黒い昆虫をくわえて持ってくるのは、子猫に餌を運ぶ行動の変形。耳を伏せていれば怯えているしるし、耳を立てたまま後ろに向けていれば怒っているしるし。このような意味を知ることで、私たちは、より深く猫を理解することができるようになります。

もちろんそれは、猫以外の動物たちにもあてはまります。コーラント・ローレンツ以来、人間はさまざまな動物たちのさまざまな行動について、その意味を解き明かすべく観察と研究を続けてきました。

その研究の成果をダイジェストでまとめたのが、ジャニン・M・ベニュス著『動物言語の秘密』(西村書店)です。この本では、ジャイアントパンダバンドウイルカ、キリン、ゴリラ、ゾウ、オオカミ、ホッキョクグマアデリーペンギンなど20種類の動物について、動物たちがとる基本的な行動パターン(移動、採食、飲水と行った基本的な行動から、挨拶、威嚇など社会的な行動まで)とその意味を、精緻なイラストとともに解説しています。

アデリーペンギンの嘴を脇の下に入れる行動は軽度の威嚇で、威嚇の程度が強くなるにしたがって横目で睨む、左右交互に横目で睨む、嘴を相手に向ける、嘴を開く、というように行動が変化することや、ライオンも猫と同じように、頭を相手の体にこすりつけたりお尻の匂いを嗅いだりして挨拶することなど、興味深い情報が盛りだくさん。各章末にはその章で取り上げた動物の行動を評価するためのフローチャートがついていて、それにしたがって動物の状態を確認していくことで、その動物が今なにをしているのか、どんな気持ちなのかを手早く判断することも可能です。冒頭の総論には「行動」の定義や動物の行動に影響を及ぼす因子など、動物の行動について考えるうえで必要となる一般的な情報もまとめられています。

動物園で集団飼育されている動物の場合、しばしば飼育員さんから、「この子とこの子は仲がいいけれどこっちの子とは仲が悪い」など、個体同士の関係性について話を聞くことがあります。この本を読めば、そのような関係性や、目の前の個体がどんな気分でいるのかを、自分の力で見抜くことができるようになるかもしれません。そうなれば、動物園で動物を見ることがきっとずっと楽しくなることでしょう。

ただ姿を眺めるだけでなく、より深くその動物、その個体について知りたいとき、この本は大きな足がかりになってくれると思います。動物園探訪のお供にオススメしたい1冊です。

 

動物言語の秘密 暮らしと行動がわかる

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