ペンギンを見たいときは(首都圏版)
日本は、ペンギン飼育大国です。日本の動物園・水族館で飼育されているペンギンは、総種数も総数も世界有数。種類を問わないのであれば、たいていの動物園・水族館でペンギンを見ることができます。
とはいえ、飼育されている種類や展示方法は施設によってさまざまで、どの施設でも同じような「ペンギン体験」ができるわけではありません。せっかく出かけたのにお目当のペンギンがいなかったら寂しいですし、同じ種類のペンギンでも、どうせならより楽しい展示で見たいですよね。そこでここでは、完全に主観ではありますが、ペンギンの種類ごとにおすすめの施設を紹介したいと思います。「あまり遠くの施設を紹介されても行けないし」という声もあるかもしれませんので地域限定、今回は、私の在住している首都圏の施設(もっと正直にいうと、私の住んでいる千葉県からアクセスしやすい施設)を紹介していきます。
フンボルトペンギン
世界でもっともたくさん飼育されているペンギンで、さらにその4分の1ほどが日本にいます。とくに動物園で「ペンギンが見られる」という場合、ほとんどがこの種類。日本の気候が適していて、繁殖抑制をしなければいけないほどよく殖えています。ペンギン飼育大国日本を象徴するペンギンと言ってもよいでしょう。その分、施設ごとの展示の工夫を楽しみやすいと言えるかもしれません。
私がオススメするのは、次の2つの施設です。
葛西臨海水族園
東京都江戸川区の京葉線沿い、葛西臨海公園内にある都立水族館です。フンボルトペンギンの飼育数が日本一で、飼育場の面積も日本一。いわゆる戸籍の管理もしている、フンボルトペンギンの総本山と言えます。
ここで注目なのは、給餌の時間に発生する「ペンギントルネード」。水中に投げ込まれた餌を追いかけて、たくさんのペンギンたちがぐるぐると竜巻のように渦を巻いて泳ぎ回る様子は圧巻です。「海を飛ぶ」鳥であるペンギンの、水中での力強さを実感することができるでしょう。
埼玉県こども動物自然公園
埼玉県東松山市、東武東上線高坂駅からバスで少しの場所にある県立動物園です。ここには、市民 ZOOネットワーク主催の「エンリッチメント大賞」を受賞したフンボルトペンギンの飼育展示施設「ペンギンヒルズ」があります。
ペンギンヒルズは、フンボルトペンギンの生息地のひとつである南米チリのチロエ島の景観を再現した施設です。フンボルトペンギンの生息地のほとんどは、岩石の上にグアノの堆積した赤茶けた砂漠のような場所ですが、このチロエ島は例外的に緑豊かで、「緑のペンギン島」とよばれています。ペンギンヒルズはその環境を本物の植栽によって再現しました。ここでは、野原や林の中をまるで自然の中にいるように伸び伸びと歩き回るペンギンたちの姿を見ることができます。しかも、ここでは施設の中に、来園者が入ることができるのです。ペンギンに触ったり、追いかけたりすることは禁じられていますが、ペンギンが自分の足元をよちよち歩いていくという、なかなか得難い体験をすることができます。
ケープペンギン
ケープペンギンは、フンボルトペンギンと同様に日本の気候が適したペンギンで、そのためフンボルトペンギンについでよくみられます。フンボルトペンギンとよく似た姿をしていますが、頭の模様などがちょっと違いますね。
私がオススメするのは次の施設です。
サンシャイン水族館
これは言わずもがなかもしれません。池袋のサンシャインシティ60にあるサンシャイン水族館には、まるで摩天楼の間をペンギンが飛んでいるかのような光景を見ることのできる「天空のペンギン」水槽があります。ここで宙を舞っているのがケープペンギンです。
晴天の日の美しさもさることながら、「ペンギンは海を飛んでいる」という(ペンギン好きが口を揃える)表現をこれほど実感できる施設はなかなかないのではないか、と思います。
マゼランペンギン
マゼランペンギンも、フンボルトペンギン、ケープペンギンと同じグループの種類で、日本で飼育しやすい部類に入りますが、飼育数はフンボルト、ケープに比べると少なめです。胸のラインが2本入ることから、ほかのペンギンと区別ができますね。
私のおすすめは次の施設です。
すみだ水族館
東京都墨田区、東京スカイツリーに併設された水族館です。屋内展示場としては国内最大級の施設を持ち、たくさんのマゼランペンギンを飼育しています。
2階分吹き抜けの空間に、ペンギン展示をぐるっと回るようにスロープが設けられ、さまざまな角度からペンギンを観察することができます。いちばん下まで降りると、水中を泳ぐペンギンの姿を観察することが可能です。水槽部分はほぼすべてアクリルガラスで作られていること、展示は中央の陸地の周りを水場が取り囲む形になっていて、その周りを観覧通路が取り囲む形になっていることから、水中にいるペンギンを観察できる面が群を抜いて広く、泳ぐ姿、水面を漂う姿(お腹)をゆったりと観ることができます。ペンギン水槽まわりにベンチが多数設置されており、飲み物や軽食を販売するスタンドもあるため、くつろぎながらペンギンを観察することが可能です。
オウサマペンギン
コウテイペンギンについで2番目に大きなペンギンで、よくコウテイペンギンに間違えられます。世界で初めて動物園で飼育されたペンギンだそうで、現在、日本でも比較的多くの個体が飼育されています。
私のおすすめは次の2施設です。
葛西臨海水族園
フンボルトペンギンでも紹介した葛西臨海水族園ではオウサマペンギンも飼育しています。フンボルトペンギンと違って暑さに弱いため、展示施設に出てくるのは秋から冬にかけてのみなのですが(夏の間は非公開の冷房室で飼育されています)、その間は屋外展示となるため、ガラス越しでなく、じかにペンギンを観察することが可能です。1年中ガラス張りの冷房室の中で飼育している施設も多いため、直接観察できるというのは大きな利点です。
鴨川シーワールド
千葉県鴨川市、JR安房鴨川駅からバスで少しのところにある水族館です。現在、国内で唯一シャチのショーを行っています。(シャチを飼育するもうひとつの施設である名古屋港水族館にいる個体はトレーニング中で、現在ショーは行っていません)。ここでは、八景島シーパラダイスの20羽越えには劣りますが比較的大きな群れでオウサマペンギンを飼育しており、繁殖もみられます。前記の葛西臨海水族園と異なりガラス越しの冷房室での展示となりますが、親を追い越すほど巨大に育つオウサマペンギンの雛がみられる可能性が、首都圏ではいちばん高い施設かもしれません。
ミナミイワトビペンギン
一般的にイワトビペンギンとして飼育されているのがこの種類です。頭に冠羽のあるマカロニペンギンの仲間では、この種ともうひとつのイワトビペンギン(キタイワトビペンギン)のみ、国内の水族館でコンスタントな繁殖が認められます(もう1種のマカロニペンギンは繁殖がうまくいっておらず、それ以外の種は飼育されていません)。テレビCMに登場したこともあり、知名度の高いペンギンのひとつですね。
私のおすすめは次の施設です。
葛西臨海水族園
またしても葛西臨海水族園ですみません。でも、関東でミナミイワトビペンギンが20羽以上の群れでみられる施設はここだけなのです。また、オウサマペンギンと同じように夏の間は非公開の冷房室で飼育しているためか、繁殖成績も良好です。大阪の海遊館と協力して人工授精の研究などにも取り組んでおり、やはりミナミイワトビといえばここ、と言わざるを得ません。
キタイワトビペンギン
もうひとつのイワトビペンギンです。飼育している施設はミナミイワトビペンギンに比べて少なく、近くに飼育している施設がある人はちょっとラッキーかもしれません。ミナミイワトビペンギンに比べて長く存在感のある冠羽が特徴です。
私のおすすめは次の施設です。
油壺マリンパーク
神奈川県三浦市、京急久里浜線の三崎口駅からバスでしばらくのところにある水族館です。イワトビペンギンの戸籍の管理も行なっているここには、日本でもっともたくさんのキタイワトビペンギンが飼育されており、いち早く累代繁殖(飼育下で生まれ育った個体がさらに繁殖すること)にも成功しています。展示場は小さめですが、40羽以上のキタイワトビペンギンの群れは壮観です。
アデリーペンギン
ペンギン、と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるイメージが、このアデリーペンギンではないかと思います。JRのICカード、Suicaのペンギンのモデルにもなっていますね。活発で好奇心旺盛で喧嘩っ早い性格であることから、結果としてもっとも多くの笑いをとっているペンギンなのではないかと疑っています(完全に主観)。ペンギンの代表格ですが、南極という特殊な環境に住んでいるため、国内での飼育は少なめで、首都圏では次の施設でしか見ることができません。
八景島シーパラダイス・アクアミュージアム
神奈川県横浜市、横浜シーサイドラインの八景島駅すぐにある水族館です。八景島では5羽が飼育されていて、給餌の際などにコミカルな姿を見ることができます。
ジェンツーペンギン
アデリーペンギンに近縁の亜南極に生息するペンギンですが、日本では、フンボルトペンギンの仲間についでよくみられるペンギンかもしれません。戸籍を管理している名古屋港水族館ではコンスタントに繁殖がみられ、海外へ旅立つ個体もいるほどです。そのため、首都圏でも比較的多くの施設で飼育されています。
私のおすすめは次の施設です。
八景島シーパラダイス・アクアミュージアム
アデリーペンギンと同様、八景島です。ジェンツーペンギンの飼育されている施設としては水槽が広いところがポイントで、ペンギンでもっとも泳ぐのが速いといわれているジェンツーペンギンがビュンビュン泳ぐところを、しっかり見ることができるのですよね。給餌の時間など、その疾走感を堪能するには、首都圏ではここがいいのかな、と感じています。
コガタペンギン
ペンギンのなかでもっとも小さい種類で、全長30cmほどにしかなりません。よく見るフンボルトペンギンの半分ほどなので、「ペンギンの赤ちゃん?」などと勘違いされてしまうこともありますね。小さくて一見可愛らしいですが、実は性格は攻撃的で、目つきもいささか剣呑なペンギンです。
私のおすすめは次の施設です。
葛西臨海水族園
またしても葛西臨海水族園。すみません。でも、コガタペンギンをみられる施設は珍しく、首都圏ではここだけなのです。また、比較的大きな群れで飼育されており、繁殖もみられます。警戒心が強いので、広い展示の奥の方や巣穴の中に隠れてしまってあんまり見えないことも多いですが、集団で水面にプカプカ浮かんでいる様子などはとても愛らしいですね。
マカロニペンギン
イワトビペンギンのところで触れた、冠羽を持つペンギンです。野生個体数がもっとも多いペンギンですが、日本での飼育個体は少なく、繁殖を軌道に乗せるために多くの個体が長崎ペンギン水族館と下関水族館海響館に集められたため、これらを含む限られた施設でしか見ることができません。首都圏では、次の施設でみることができます。
箱根園水族館
箱根、芦ノ湖の辺りにある箱根園内の水族館です。オウサマペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギンに加え、マカロニペンギンを飼育しています。
そのほかのペンギン
今回取り上げた種以外に、日本国内ではコウテイペンギン、ヒゲペンギンが飼育されています。しかし、これらのペンギンは首都圏では見ることができません。コウテイペンギンは和歌山県のアドベンチャーワールドか愛知県の名古屋港水族館、ヒゲペンギンはこれら2つの施設に加えて長崎ペンギン水族館まで足を伸ばす必要があります。アドベンチャーワールド、名古屋港水族館は、飛行機、新幹線を使えば首都圏からもアクセスしやすいので、これらのペンギンが見たい場合は、出かけてみるとよいでしょう。
以上、完全に私の主観ではありますが、首都圏でおすすめのペンギン施設をまとめてみました。
休日のお出かけの、参考になれば幸いです。