油壺マリンパークのペンギン
神奈川県内には、横浜・八景島シーパラダイス、新江ノ島水族館という大型で先進的な施設を備えた水族館が多く存在します。油壺マリンパークは、両雄の影に隠れがちですはあるものの、ペンギン飼育という観点では、それらに勝る実績を誇る水族館です。
飼育されているのはキタイワトビペンギン。イワトビペンギンの仲間を飼育する水族館は多数ありますが、そのほとんどはミナミイワトビペンギンで、キタイワトビペンギンを飼育している水族館はあまりありません。油壺マリンパークはそんな貴重な水族館のひとつです。
しかも、油壺マリンパークは、キタイワトビペンギンの2世代にわたる繁殖に成功しています。ペンギンの飼育実績としては文句なしにトップクラスといえるでしょう。
キタイワトビペンギンの冠羽はミナミに比べて長く豊富で、見応え抜群。一見の価値ありです。
東武動物公園のペンギン
東武動物公園は、動物園と遊園地が一体となったテーマパークです。世界初の水上木製コースター「レジーナ」や、「カワセミ」などスリリングなアトラクションから、小動物に癒されるふれあい動物園まで揃い、幅広い客層が楽しめるようになっています。
ニコニコ動画に公式チャンネル「ZOOっと友達チャンネル」を開設しており、ネットを介しても園内の様子を紹介してファンを集めている、情報発信の得意な動物園でもあります。
人気アニメ「けものフレンズ」ともっとも多くのコラボを開催しており、ファンの間では、「けものフレンズ」といえば東武、というイメージができあがっているかもしれません。最初のコラボで設置された「フルル」(フンボルトペンギンのキャラクター)のパネルに恋(?)をしたグレープ君は日本のみならず世界中の注目を集め、一躍有名となりました(高齢であったため2017年10月に亡くなってしまいましたが)。
東武動物公園では、そんなフンボルトペンギンに加え、オウサマペンギンが展示されています。
すみだ水族館のペンギン
すみだ水族館は、東京スカイツリーの足元にある都市型の水族館です。コンパクトで飼育点数はそれほど多くはないですが、内装や照明がスタイリッシュでデートにはうってつけのスポットとなっています。
目玉の展示はペンギン水槽。日本最大級の屋内プールにたくさんのマゼランペンギンが飼育されており、間近でその姿を観察することができます。水中を泳ぐ様子も、曇りのないアクリル越し(ペンギン水槽として珍しい)に見ることができ、しかもペンギンたちは人に興味を持って寄ってきてくれます。1種だけの展示ではありますが、ペンギンをじっくり観察するにはもってこいでしょう。
すみだ水族館のペンギンたちは、やれBLだ三角関係だと、話題に事欠かないのも楽しいですね。餌やりタイムには各個体の性格や関係性が紹介され、聞いていると親近感が湧いてきます。
水槽の周りにはイルカなどのショープールのように座席が設けられており、そこに座ってゆったりと観察することもできます。21時まで開いているので、仕事帰りにふらっと寄ることも可能。ペンギン好きにとっては、都会のオアシスのような場所といえるでしょう。
すみだ水族館公認ガイドブック 飼育員だけが知っているペンギンたちの秘密の生活
- 作者: 中田啓子
- 出版社/メーカー: (株)文踊社
- 発売日: 2014/02/05
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ペンギンの「泡」の秘密
こちらは、八景島シーパラダイスで撮影したペンギンの映像です。
地上で飼育員さんのおねえさんについていくペンギンたちも可愛いのですが、今回注目して欲しいのは、水中を泳ぐオウサマペンギンの体から伸びる泡の筋。
羽毛の間に蓄えた空気が外へ出ていくことで作られるこの泡は、ペンギンが泳ぐときに大きな力を発揮します。ペンギンの体を包むこの泡は、周囲の水の粘性と密度を低下させ、抵抗を減らし、ペンギンたちより速く泳ぐことを可能にしているのです。
この「工夫」は、潜水艦などにも応用されているもの。
ペンギンの「泳ぐ技術」はすごいのです。
参考
恩賜上野動物園のペンギン
恩賜上野動物園は日本でもっとも歴史のある動物園です。現在も年間来場者数は動物園のなかでもっとも多く、飼育種数は東山動植物園に次いで第2位です。ジャイアントパンダ、オカピ、コビトカバの「世界三大珍獣」がすべて揃っている、様々な動物の飼育下繁殖を国内ではじめて成功させているなど、名実ともに日本一の動物園といえるでしょう。動かない鳥として有名なハシビロコウや特別天然記念物のオオサンショウウオ、タイとの友好の証としてやってきたアジアゾウたちなど、見所は盛りだくさん。パンダだけではもったいない動物園です。
かつては園内に水族館が設置され(のちに葛西臨海水族園として独立)、コウテイペンギン、マカロニペンギンなどが展示されていました。水族館がなくなった現在は、ケープペンギンをみることができます。
名古屋港水族館
施設の概要
名古屋港水族館は、愛知県名古屋市、地下鉄名港線名古屋港駅からすぐにある水族館です。日本最大の延べ床面積を持つ大型水族館で、日本ではほかに鴨川シーワールドでしか飼育されていないシャチをはじめ、多くの貴重な水棲生物が展示されています。日本ではじめて、飼育施設内の人工砂浜でのアカウミガメの産卵、孵化を成功させるなど繁殖技術も高く、研究活動も盛んで、人工衛星追跡システムによる北太平洋のアカウミガメの回遊ルートの解明や、シャチの発情周期の把握など、多くの成果をあげています。規模、実績ともに、日本を代表する水族館のひとつといってよいでしょう。
この水族館は、テーマの異なる「北館」と「南館」の2つのエリアからなっています。
北館のテーマは「35億年 はるかなる旅 〜ふたたび海へもどった動物たち〜」。シャチをはじめとする海獣類を展示し、生体だけでなく骨格標本などを駆使し、彼らの進化の歴史を解説しています。進化についての展示は福井県立恐竜博物館で化石鯨類の研究に携わっている一島啓人さんが手がけており、博物館顔負けの内容です。また、ハンドウイルカやシロイルカの飼育されている水槽は水中、水上ともビューポイントが広くとられており、巨大な水槽のなかを泳ぎ回るイルカたちの姿をじっくり観察することができます。
南館のテーマは「南極への旅」。名古屋港に永久繋留されている南極観測船ふじが、かつて南極への航海の際に辿ったルートに沿って、「日本の海」から「南極の海」まで、5つの水域に生息する生物を展示しています。いわゆる「イワシトルネード」が見られる水槽やウミガメの回遊水槽(現在はリニューアル工事中)など個々の展示が魅力的であることももちろんですが、すぐ近くでふじを見学できることも相まって、とても叙情あふれる「旅」を味わうことができます。水族館でしか見られない迫力の映像作品を視聴できる「シネマ館」や磯の生き物に手で触れられるタッチタンクなど、様々な楽しみ方を提供してくれるエリアとなっています。
ペンギン
ふじの航海の終着点はもちろん南極。そして、南極を代表する生き物といえばペンギンでしょう。そんなわけで、名古屋港水族館は、ペンギンの展示にも力を入れています。展示しているのはもちろん、南極大陸に繁殖地を持つ4種のペンギン(コウテイペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン)です。
水槽は横に長く作られているので、ペンギンたちの泳ぎをたっぷり堪能することができます。大きなコウテイペンギンの、潜水艦のように力強い泳ぎは迫力満点。陸に上がってぬぼっと立っているときの倍は大きいように感じられ、彼らのホームは海なのだな、と実感させられます。なお、観覧通路を挟んで水槽の向かい側には古い球場の観客席みたいな階段状のシートが設けられているので、座ってゆっくり観察することが可能です(私は大体2時間くらいはここにいます)。
観察の狙い目は朝と夕方のフィーディングタイムです。飼育員さんがマイクを通して解説をしてくれますし、コウテイペンギンの陸上での活発な姿を見ることができます。コウテイペンギンたちは水中にいるか、陸上のすみっこでかたまっていることが多いので、とくに写真を撮りたい場合などは、この時間に訪れると間違いがないでしょう。
名古屋港水族館のペンギン展示で特筆すべき点は、南極に合わせて日照時間を調節していることです。
ペンギンをはじめ多くの動物は日照時間の変化によって季節を感じとっており、発情や冠羽などの生理現象は、その変化が刺激となって発生します。そこで名古屋港水族館では、1日中太陽の沈まない夏の「白夜」や1日中太陽の昇らない冬の「極夜」を含めて、南極の日照時間の周年変化を再現し、ペンギンのバイオリズムが正常に保たれるように取り組んでいるのです。そのおかげか、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの繁殖ではほかの施設の追随を許さない実績をあげています(南半球にある南極に合わせて夏と冬を日本とは逆転させているため、行楽シーズンには極夜になってしまってペンギンが見難い、といったこともあるのですが……)。
観覧通路に「猫じゃらし」が置いてあるのも面白いところです。水槽のガラスごしに猫じゃらしを振ると、好奇心の強いジェンツーペンギンなどがよってきて見事にじゃれてくれます(これがペンギンの退屈を解消するエンリッチメントにもなっています)。「一緒に遊ぶ」経験は、ペンギンへの親しみをより深めてくれることでしょう。
また、展示エリアを抜けた先には標本やレプリカ、ビデオなどを用いた情報コーナーがあり、ペンギンの生理や生態について学ぶこともできます。
残念ながらコウテイペンギンの繁殖には未だ成功していませんが、総合的には充実した展示といえるでしょう。
名古屋港水族館は、前述したように質・量とも日本を代表する水族館といえます。公共交通機関でのアクセスもよいので、ぜひ一度、訪れてみることをおすすめします。
サンシャイン水族館のペンギン「天空のペンギン」
ペンギンは「飛べない鳥」である。
多くの人は、きっとそう思っていることでしょう。
某有名ペンギンアイドルユニットですら、「飛べない」ことを何度も歌わされています。
まあ、無理もないことです。確かに、よちよちとたどたどしい足取りで歩く姿を見たら、「この生き物が飛べる」などとは到底思えません。
しかし。
ペンギンは飛ぶのです。
もちろん、空は飛べません。でも、その代わり、ペンギンたちは、海を飛ぶ。
「泳ぐ」の間違いでは、という人もいるでしょう。そういう人は、ぜひ、水の中のペンギンたちを見て欲しい。
水の中で羽ばたいて、巧みに「泳ぐ」鳥類はたくさんいます。カツオドリやツノメドリ、ウミスズメの仲間。いずれも魚を捕まえることができるほどの泳力の持ち主です。
しかし、ペンギンは、彼らとは一線を画します。水中でのペンギンの動きは、彼らとは明らかに違う。羽ばたくたびに体が上下に振れ、ロスの生じるカツオドリたちとは異なり、ペンギンたちは、滑るように一直線に、水の中を進んでいくのです。それこそ、空中を滑空するカツオドリのように。カツオドリたちの動きを「泳ぎ」とするなら、ペンギンの動きはまさしく「飛翔」。ペンギンは、「空を飛ぶことをやめて海を泳ぐことにした鳥」ではなく、「空を飛ぶことをやめて、海を飛ぶことにした鳥」なのです。
そのことを、もっとも実感できるのが、池袋のサンシャイン水族館にある「天空のペンギン」展示です。この展示では、頭上を覆い、向こう側に副都心の摩天楼と大空を臨む水槽の中を飛び回るケープペンギンたちを見ることができます。スイスイと動き回るその様子は、本当に摩天楼の間を飛び回っているよう。「ペンギンが空を飛んでいる」と表現してもまったく違和感のないその光景を目にすれば、「ああ、彼らは普段、海の中を飛んでいるのだ」と、自然に納得できることでしょう。
ペンギンのイメージといえば「かわいい」ですが、ぜひともここで、戦闘機のように「かっこいい」ペンギンを見てあげて欲しい、と思います。