ペンギンの話

ペンギンのことをつらつら書いていきます。

名古屋港水族館

施設の概要

名古屋港水族館は、愛知県名古屋市、地下鉄名港線名古屋港駅からすぐにある水族館です。日本最大の延べ床面積を持つ大型水族館で、日本ではほかに鴨川シーワールドでしか飼育されていないシャチをはじめ、多くの貴重な水棲生物が展示されています。日本ではじめて、飼育施設内の人工砂浜でのアカウミガメの産卵、孵化を成功させるなど繁殖技術も高く、研究活動も盛んで、人工衛星追跡システムによる北太平洋アカウミガメの回遊ルートの解明や、シャチの発情周期の把握など、多くの成果をあげています。規模、実績ともに、日本を代表する水族館のひとつといってよいでしょう。

この水族館は、テーマの異なる「北館」と「南館」の2つのエリアからなっています。

北館のテーマは「35億年 はるかなる旅 〜ふたたび海へもどった動物たち〜」。シャチをはじめとする海獣類を展示し、生体だけでなく骨格標本などを駆使し、彼らの進化の歴史を解説しています。進化についての展示は福井県立恐竜博物館で化石鯨類の研究に携わっている一島啓人さんが手がけており、博物館顔負けの内容です。また、ハンドウイルカやシロイルカの飼育されている水槽は水中、水上ともビューポイントが広くとられており、巨大な水槽のなかを泳ぎ回るイルカたちの姿をじっくり観察することができます。

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大きな水槽の中をゆったり泳ぐイルカ

南館のテーマは「南極への旅」。名古屋港に永久繋留されている南極観測船ふじが、かつて南極への航海の際に辿ったルートに沿って、「日本の海」から「南極の海」まで、5つの水域に生息する生物を展示しています。いわゆる「イワシトルネード」が見られる水槽やウミガメの回遊水槽(現在はリニューアル工事中)など個々の展示が魅力的であることももちろんですが、すぐ近くでふじを見学できることも相まって、とても叙情あふれる「旅」を味わうことができます。水族館でしか見られない迫力の映像作品を視聴できる「シネマ館」や磯の生き物に手で触れられるタッチタンクなど、様々な楽しみ方を提供してくれるエリアとなっています。

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向かいに繋留されているふじの見学と合わせれば、ワクワクは2倍

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ウミガメの回遊水槽では、砂浜に上陸している様子をみられることもある

ペンギン

ふじの航海の終着点はもちろん南極。そして、南極を代表する生き物といえばペンギンでしょう。そんなわけで、名古屋港水族館は、ペンギンの展示にも力を入れています。展示しているのはもちろん、南極大陸に繁殖地を持つ4種のペンギン(コウテイペンギンアデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン)です。

 

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コウテイペンギン

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ジェンツーペンギン

アデリーペンギン

アデリーペンギン

ヒゲペンギン

ヒゲペンギン

水槽は横に長く作られているので、ペンギンたちの泳ぎをたっぷり堪能することができます。大きなコウテイペンギンの、潜水艦のように力強い泳ぎは迫力満点。陸に上がってぬぼっと立っているときの倍は大きいように感じられ、彼らのホームは海なのだな、と実感させられます。なお、観覧通路を挟んで水槽の向かい側には古い球場の観客席みたいな階段状のシートが設けられているので、座ってゆっくり観察することが可能です(私は大体2時間くらいはここにいます)。

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水中のコウテイペンギンは潜水艦のよう

観察の狙い目は朝と夕方のフィーディングタイムです。飼育員さんがマイクを通して解説をしてくれますし、コウテイペンギンの陸上での活発な姿を見ることができます。コウテイペンギンたちは水中にいるか、陸上のすみっこでかたまっていることが多いので、とくに写真を撮りたい場合などは、この時間に訪れると間違いがないでしょう。

名古屋港水族館のペンギン展示で特筆すべき点は、南極に合わせて日照時間を調節していることです。

ペンギンをはじめ多くの動物は日照時間の変化によって季節を感じとっており、発情や冠羽などの生理現象は、その変化が刺激となって発生します。そこで名古屋港水族館では、1日中太陽の沈まない夏の「白夜」や1日中太陽の昇らない冬の「極夜」を含めて、南極の日照時間の周年変化を再現し、ペンギンのバイオリズムが正常に保たれるように取り組んでいるのです。そのおかげか、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの繁殖ではほかの施設の追随を許さない実績をあげています(南半球にある南極に合わせて夏と冬を日本とは逆転させているため、行楽シーズンには極夜になってしまってペンギンが見難い、といったこともあるのですが……)。

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ジェンツーペンギンの雛。名古屋港水族館ではコンスタントなペンギンの繁殖がみられる

観覧通路に「猫じゃらし」が置いてあるのも面白いところです。水槽のガラスごしに猫じゃらしを振ると、好奇心の強いジェンツーペンギンなどがよってきて見事にじゃれてくれます(これがペンギンの退屈を解消するエンリッチメントにもなっています)。「一緒に遊ぶ」経験は、ペンギンへの親しみをより深めてくれることでしょう。

また、展示エリアを抜けた先には標本やレプリカ、ビデオなどを用いた情報コーナーがあり、ペンギンの生理や生態について学ぶこともできます。

残念ながらコウテイペンギンの繁殖には未だ成功していませんが、総合的には充実した展示といえるでしょう。

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陸上部分は高さもあり、見上げると壮観である

 

名古屋港水族館は、前述したように質・量とも日本を代表する水族館といえます。公共交通機関でのアクセスもよいので、ぜひ一度、訪れてみることをおすすめします。

www.nagoyaaqua.jp

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