ペンギンの話

ペンギンのことをつらつら書いていきます。

「ペンギントークwithちく☆たむ」について思うこと。

東武動物公園では現在、「けものフレンズ」とのコラボレーションイベント「東武ジャパリパークへシュッパツシンコウ」が開催されています。その一環として今日(4月20日土曜日)に、「やまだおにいさん、さくらいおねえさんのペンギントークwithちく☆たむ」が実施されました。ペンギンたちへの給餌の時間を利用して行われるキーパーズトークに、「けものフレンズ」でジェンツーペンギンを演じる田村響華さんと、フンボルトペンギンを演じる築田行子さんがゲストで参加するイベントです。

www.tobuzoo.com

ちく☆たむのお二人のことは好きなので、あにてれテレビ東京が運営するアニメ配信サイト)で放送されたライブ配信をちらっと覗いたのですが、そのとき、なんだかもやもやしたものを感じてしまったので、メモとして記しておきたいと思います。

配信を覗いてみてまず目についたのは、画面に映る観客の後頭部が、成人男性のもの(ハイティーンの方もいたかもしれないですが)ばかりだったことです。動物園を訪れる人の多くは家族づれあるいはカップルで、そのためキーパーズトークに集まる人の男女比も、私が見る範囲ではほぼ半々になっていることが多いですから、男性に偏っているのは十中八九、「けものフレンズ」コラボの、そしてちく☆たむの影響だと思いました。若い女性声優であるちく☆たむのファンが、ちく☆たむを見たくて前列に陣取っているのだろうと。

はじめはそれをたいしたことだとは考えませんでした。「けものフレンズ」のコラボイベントなんだし、ファンが集まるのは当然で、やっぱりな、という感じです。ちく☆たむのファンはだいたいペンギンが好きですから、まあ楽しそうなこと、と思っていました。

けれど、よくよく考えてみて、ひょっとしてこれは、まずいことなんじゃないかという思いが湧いてきました。正確にいえば、まずいことが起きるリスクを孕んだ現象なのではないか、と思うようになりました。なぜなら、「ペンギントーク」それ自体は、コラボとは関係なく、毎日同じスケジュールで開催されている東武動物公園の「常設展示」だったからです。コラボのために用意されたものではなく、もともと来園者すべてに向けて行われているイベントを組み込んだもの。それを、コラボ期間中とはいえ、「けものフレンズ」ファン、ちく☆たむファンがジャックするような形になってしまうと、博物館に準ずる施設とされ、存在意義のひとつに環境教育を掲げる動物園の理念に反することが起こりうるのではないか、と思ったのです。

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たとえば、「ちく☆たむを見たい人たち」があまりにたくさん集まって、最前列のみならず観覧スペースのほとんどを埋めてしまったら、その分、「純粋にペンギンを見たい人たち」(ペンギントークの本来のターゲット)が展示から遠ざけられてしまうかもしれません。「ペンギンが特別に好きというわけではないけれど、通りかかったらたまたま飼育員さんがなにか喋っているから聞いていこうか」と思ってくれたかもしれない人(ペンギントーク潜在的なターゲット)が、「なんか知らない人のイベントをやってるし、混んでるからパス」してしまうかもしれません。観覧スペースがちく☆たむファンによって占拠されていなかったとしても、あるいはちく☆たむが出演すること自体が、「ちく☆たむって誰?」という人にとってはノイズになってしまうかもしれません。もしそうなってしまったら、動物園としては間違いなく失点です。楽しみ方は人それぞれとはいえ、動物園はなによりもまず、「動物それ自体を楽しむ人のための場所」であるはずだからです。今回のイベントが実際にどうであったかは画面越しにしか見ていない私にはわかりませんが、同様のイベントを開催した場合に、そういうふうになってしまうリスクはあるのではないかと私は考えています。

もちろん、今回のイベントでも、ちく☆たむのファンの人たちは、「ペンギンに興味もないのに前列に陣取っていた」わけではないはずです。前述のとおり、ちく☆たむのファンの人はだいたい動物が好きで、もしちく☆たむが参加していなかったとしてもペンギントークを楽しめる人たちであることを私は知っています。ただ、ちく☆たむがいなくても動物園に行く人たちが、ちく☆たむの出るイベントにわざわざ集まるということは、少なくともそこにおいては、軸足が「ペンギン」ではなく「ちく☆たむ」に置かれているのは確かでしょう。私自身も含めて、そういう立場の人が大勢集まることによって、「ちく☆たむなんて知らんけどペンギンを見たかった人たち」が遠ざけられてしまうとしたら、集まっているのが全員動物好きであったとしても、やっぱりあまりいいことではないかもしれないと思うのです。

なお、自己弁護になってしまうかもしれませんが、これはどちらかといえば、ファンというよりは動物園側の姿勢の話ということになるのだと思います。公共的な施設であるという前提のうえで、それでもやむなしとするのかどうか。餌代は間違いなく稼げるでしょうから。

個人的には、このようなコラボイベントは、一般の来園者の体験を妨げるリスクを最低限にした形で開催されるべきだろうと思います。どうしてもキーパーズトークにタレントを呼ぶならば通常回とは別に1回増やすかですが、それでも観覧スペースを一時的に占拠するのは同じですし、動物の負担も増えてしまいますから、やはり展示の中ではなくイベントステージなどで別個にイベントを行うのがよいのではないでしょうか(「けものフレンズ」コラボではたいていはそのような形でトークショーなどのイベントが行われていますね)。一時的なものだからいいじゃん、という考えもあるかもしれませんが、その動物園にもう二度と来ない人、なかなかこれない人だっているかもしれないわけで、そういう人に対して何かが伝えられたかもしれない機会を失うリスクは少ないほうがいいはずです。

私はちく☆たむのことが好きで、その活動を応援しています。だからこそ、うまく使ってあげてほしいなあ、と思うのです。